Diaryの日記帳

映画、アニメの感想を中心に掲載します。

感染したいあなたに贈る、光り輝く金色のバット

音は意味をバイパスすることができる

伊藤計劃虐殺器官




疫病の流行に伴う流言が急速かつ大量に広がって社会に混乱をもたらす状況のことを、「インフォデミック」という。
最初に用いたのはWHOらしい。
このような言葉が生まれたという事実を受けて思うことは、言葉もまた病原菌と同じように感染するということ。
それをテーマに記事を書いている人を最近見かけた。
「情報というウィルス」に抵抗するために「積読」が重要な理由(永田 希) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)



フィクションの分野でも「感染する言葉」をテーマにしたものは存在する。
記事の中で触れられている伊藤計劃さんの小説「虐殺器官」もそのような作品の一つだ。
僕の大好きな作品であり、読む前と後で考え方を大きく変えられた。
いわばマイバイブル。
しかし、この場で触れたいのは別の作品。



今敏監督の生み出したアニメーション、その名も「妄想代理人」。
キャッチコピーは「人々の内側で蠢く不安と弱さが最大限に増幅されたとき、少年バットは現れる。」。







今敏監督が何者なのかいまいちピンときていない人には、「パプリカ」を作った人って言えば伝わるかもしれない。
あ、米津玄師は関係ありませんよ。



2004年に作られたこの作品を、当時年齢が一桁だった僕はリアルタイムで見ていない。
初めて見たのは、高校生の時だったと思う。
今よりもフィクションというものに真剣に向き合おうとする姿勢のなかった男子高校生のDiaryは「よくわからんが凄かった」という小並感しか出なかったのか、それともただ単に忘れただけなのか、数年経った今、物語のオチを思い出そうとしてもぼやっとした感覚が頭を占めるだけである。
そのような事情もあり、dアニメストアで最近一気見したのだった。



言葉の伝染によってめちゃくちゃにされる世界といった時、このブログを読んでいるみなさんはそれを想像することができるだろうか。



おそらく、容易くできることだろう。
なぜって正に今の状況がそうだから。
妄想代理人は、それを肌で感じることができる。
その生々しさは体験しているといっても過言ではない。
全13話で構成されているが、話の大筋はそんな長い尺を使わずに語ることができる内容のものだ。
冗長過ぎるとさえ感じる人もいるかもしれない。
でも、僕は敢えてそうしたのだと感じる。
黄金バット」という病が、日本中を蝕んでいく様子を、とんでもなく長い時間をかけて見せつけられる。
気がついた時には既に遅く、フィクションに触れていただけであるはずの視聴者も、「黄金バット」という病に取り憑かれている。