Diaryの日記帳

映画、アニメの感想を中心に掲載します。

さらば、わたしよ

要らなくなったところで次の私を探すんでしょう

back number『助演女優症2』

「私」とは何なのか。
「私」はどこにいるのか。
それは『私は』と語るその人がいつも持っているように思えて、案外そうでもない。
現に、今ここで語っている「私」を、僕は持っていない。
かつての僕の所有物。
今はエディタの所有物。
それが「私」。
今の僕には、その「私」を別個体として撫でることだってできるのだ。

「私らの映画は始まりやしない。」

さみしさの代理人である中年男は、そう嘆いていた。

映画が、本が、物語が。
それらが始まらないと嘆くくらいなら、自らの手で始めてしまえばいい。
この日記には、そんな祈りも含まれている。
ほら、こうすれば僕は、「私」だらけの世界から抜け出すことができる。
みんながみんな、代理人のこの世界から。
今の僕は、僕の代理人だ。
それと同時に誰かの代理人でもありたい。
僕は何の代理人なんだろう。
わからない。
ちっとも。
でも、何かの代理人でなければ、自分に価値が見出せない。
だから、ここでよく分からない言葉を生成し続けている僕も、何かの代理人であれたら、そんな風に願ってしまう。

これは「私」へのお別れの手紙。
入力されたその瞬間から「私」は僕のものではなくなる。
テキストエディタと、そしてこれを読むあなたのもの。
叩くなり、嗤うなり、好きにしてくれて構わない。
そうなれば僕は、道化の代理人になれるから。